素因数分解の世界記録はいかに作られたか
Vol.91 No.6pp.462-468
発行日:2008/06/01
Online ISSN:2188-2355
Print ISSN:0913-5693
種別:小特 集素数
専門分野:
キーワード:
素因数分解, 数体篩法, PCクラスタ, 故障,
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あらまし:
NTT+Bonn大+EPFLの研究チームは2007年5月に小さな因子のない1,000ビット(10進300けた)を超える合成数の素因数分解を完了したことを報告した.今回分解した合成数は21039-1といった特殊な形であるので,直ちに1,000ビット程度の法を持つRSA署名などに影響を及ぼすものではないが,1999年に作られた512ビット合成数の素因数分解に次ぐ一里塚として意義深いものである.今回の分解実験は技術的には予想外に順調に進んだが,これは過去の記録達成のための経験があったからにほかならない.本稿では過去の素因数分解実験における純粋な数学的問題以外に起きた問題や解決などについて記述し,どう前述の記録につながったかについて報告する.