■3. ポスター セッションの実際

 3.1 説明の際には[指示棒]の使用を


 一般に,人間は,外部からの情報を目と耳から受けている.ところで〔眼から受ける情報〕と〔耳から受ける情報〕とでは,その伝達の方法で,その性質や特性に大きな違いがある.

 すなわち〔受け手〕の〔耳から入る情報〕は【音声の塊】が時間系列となって,次々とそこに到達する形をとるので,その全体像を理解するのに時間が掛かる(これは【文章】によって情報を伝達する場合も同様である).

 これに対し〔眼から入る情報〕は[図・表など]のように二次元的なので,瞬間的に〔受け手〕に伝達される.

 したがって,情報の伝達者は,その[伝えたい情報]を,性格の異なる[音声]と[画像]との《どちらで伝えれば,より効果的か…?》をまず初めによく考えて,それから[伝える情報]を《視覚と聴覚の両者に分け》,これらを上手に組み合わせて《並列的に伝達する》とよい.これによって,受け手はその情報を三次元的…つまり立体的に受け取るために,短時間で解りやすく目的の情報を伝えることができるようになる.

 これが,いわゆる[視聴覚技法]である(図6).

 したがって[音声と画像]の両方の情報の間には,当然,[相関性]が必要であって,これを筆者は[AV相関]と呼んでいる(図6参照).

図6 視聴覚技法の基礎〔聴覚と視覚の相関〕

図6 視聴覚技法の基礎〔聴覚と視覚の相関〕

 さて,この[AV相関]を効果的に取るための《安価でしかも便利で簡単な道具》がある.それが初めに図1の中に示した[指示棒]である.良いプレゼンテーションの遂行のために,これは是非使用して頂きたい.

 すなわち,ポスター中の[図・表・文字列]上の要点を,[指示棒]の先端で指し示しながら,参加者を説得するように説明を行う.

 この場合の[コツ]は,〔説明者〕は《[指示棒の先端]を見つめつつ》,それで〔受け手〕の眼をポスター上の要点へ誘うようにすることである.

 もし,指示棒が手元に無い場合には,臨機応変に,胸元の[ボールペン」とか[鉛筆]などを,とっさに指示棒の代わりに利用して,それが[ポスター]の重要箇所の内容の邪魔にならぬように,指示して説明をする.

 また[ポスター セッション]では,講演発表の場合と異なって,〔受け手〕は〔送り手(説明者)〕のすぐ近くにいるので,指示棒の代わりに〔説明者〕の手指を使ってもよい(図7).

 この場合に注意することは,片手を軽く握り,その〔人指し指〕を立てて指示することである.中には,5本の指を広げたままで指示する方がいるが,これでは〔受け手〕は《どの指先を見たら良いのか》迷ってしまう.これは〔受け手〕のことを忘れた《気配り不足》のやり方である.(図7の×と○とを比較して下さい.)

図7 何よりも[気配り]のある指示が大切

図7 何よりも[気配り]のある指示が大切

 [注] 《気配り不足》といえば【レーザビームポインタ】が,その簡便さの故に,最近よく使われるようになったが,その使い方には,次のような大きな気配りが必要である.

 すなわち,手に持った【ポインタ】から出る[レーザビーム]は,手元から遠く離れてポスターやスクリーンに届くので,その[光点像]の動きは,ポインタを持つ手の[些細な振れ]でも,《大きく速い動き》となって現われて〔受け手〕に《イライラ感》を与えてしまう.これを用いる場合には,【ポインタ】を持つ手の肘をしっかりと脇腹に付けて,ポスター上の[光点像]が不安定にならぬように気配ることが肝要である.



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