■3. fMRI解析処理

 ノイズが多いfMRI信号から,ノイズに隠れた本質的な現象を見つける必要があるため,統計的な処理が適用される.この分野の代表的ソフトとなっているSPM(7)(Statistical Parametric Mapping)の概要を紹介する.

 3.1 SPM

 SPMは,fMRI(とPET)の標準的解析手法として広く受け入れられており,図3のように,fMRIデータの一連の前処理部と,有意な脳活動であるか否かの統計的な仮説検定部から構成される.また,脳画像や処理結果の表示や画像処理等のユーティリティも充実している.

 fMRI時系列データに,以下のような前処理を行い,その後,有意な活動部位の統計的検出を行う.

 (1) 整列(Realignment)
 先頭の画像に以降の画像をそろえることで,測定中の頭の動きを補正し,位置情報を正しく保ち,動きによる擬似信号を取り除く.

 (2) 空間的正規化(Spatial Normalization)
 多くの被験者データをまとめたり比較するために,個々の被験者データを標準脳に合わせる.SPMの標準脳は,脳解剖学のTalairach標準脳に準拠し,fMRI解析結果を客観的に報告することを可能にする.

 (3) スムージング(Smoothing)
 ノイズの多いfMRI信号にGaussianフィルタを適用することで,空間分解能を下げず,解析感度を向上させる.

 (4) 統計的検定
 標準脳に正規化した状態(このときのボクセルのサイズは2×2×2mm)で解析対象となるボクセルは,脳全体では約30万点に及び,脳機能局在の正確な位置情報を持っている.このボクセルごとにfMRI時系列データが得られる.SPMでは,ボクセルごとに各種のt検定を行い,タスクに伴う有意な活動部位を,個人データ内,更にはグループ間で検定する.この計算を柔軟に行う枠組みとして,一般線形モデル(GLM)を用いるほか,ノイズの多い活動の空間的広がりを評価するための拡張を行っている.

 SPMでは,活動推定のモデル(図3のデザインマトリックス)を事前に用意し,fMRI時系列データがどれだけモデルに照合するかを,GLMを使いパラメータ推定する.図3のデザインマトリックスの左欄がCar-Box型モデルでのタスクの有無を示しており,データの変動との照合の程度を検定する.BOLD信号の発生の検出をねらう場合は,その発生時刻が既知の場合は,デザインマトリックスに図1(a)のBOLD信号を埋め込めば,BOLD信号生成の事象解析が可能になる.理論的な背景や使い方,更に高度な解析等ついては,SPMのホームページ(6)の参照を勧める.



図3 SPMのfMRI処理の概要(7)

図3 SPMのfMRI処理の概要(7)

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